第43回湘友会セミナーのご案内

  • 日時: 2016年 7月23日(土) 13時~14時 米国留学 質問・相談会、14時~16時 講演会
  • 場所: 湘南高校 歴史館スタジオ
  • テーマ: 「私は経済学をこう考える~リーマンショックを米国で経験して」
  • 講師: 金木 正夫氏 (53回生) ハーバード大学医学部准教授
  • 対象: 湘南高校 在校生、卒業生、教職員
  • 参加費: 無料
  • 事前申込: 不要

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(以下、金木氏より)
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在校生のみなさんには、今回は特別に、13時から14時まで、米国留学に関する ★質問 ★相談 ★傾向と対策 ★授業料減免制度に関する情報 ★アドバイス の時間を設けています。気軽に来て下さい。教職員の先生方も歓迎致します。 ──── ハーバード大学を含め米国のほとんどの大学が、日本からの大学、大学院への留学生をもっと増やしたいと思っていることを知っていますか?」
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プロフィール (&現在の勤務先)

鎌倉市立御成中学出身。湘南高校時代は33組で担任は田辺康仁先生、陸上競技部で山田勉先生にハンマー投げを教わる。今にして思えば、湘南高校のリベラルで自由な雰囲気が好きだった。東京大学 医学部卒業後、老年病学教室に入局。1995年、米国ハーバード大学に留学。それ以来、「炎症反応代謝変容 (代謝異常) が、加齢に伴う症候群 (動脈硬化、糖尿尿、アルツハイマー病、癌など) を含む、ほとんどすべての病気に関与している」という作業仮説に基づき、多くの病気に共通している細胞内情報伝達ネットワーク、とくに正のフィードバック機構のハブ (結節点) を見つけようと研究している。ハーバード大学医学部准教授、マッサチューセッツ総合病院 麻酔・集中治療学・疼痛医学講座 細胞内情報伝達研究室ディレクター。
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要旨 (セミナーのテーマについて)

米国で1995年からバイオ・メディカル分野の研究者として、“サバイバル・ゲーム” を続けています。それにしても、この21年間で、米国も大きく変わったように思います。節目になったのは、やはり、9/11とリーマン・ショックでした。2008年秋のリーマン・ショックは、自分と自分の研究室のメンバーの雇用を守る “零細企業のオヤジ見習い” である私の研究生活を直撃しました。周囲ではすぐにリストラが始まり、近所の商店街でもシャッターの閉まった店が増え、米国政府や財団の研究費カット、財団の研究費募集の中止などが続きました。2009年3月まで株価が下がり続けていた時には、株の売買もしたことのない“経済音痴”の私が、「バブルでもいいから、とにかく株価が上がってほしい」と神にでもすがって祈りたい気持ちでいる自分に驚きました。それでも何とか2009年が終わり2010年を迎えた頃、NYウォール街の大銀行が税金で救済され、事実上国有化されたのにもかかわらず、約1000億円以上の収入を得ている株式・証券市場のトレーダーが10人以上のレベルでいることに再び驚き、正直なところ、自分より一万倍以上の能力、努力、社会への貢献に対する当然の報酬だとは思えませんでした。当時は、これに対して怒らない米国人も “大人しい” ものだと “ガッカリ” したものですが、2016年の今になって、その一部は、大統領選挙におけるトランプ現象やサンダース旋風として現れているようです。当時、英国のエリザベス女王は「経済学者はいったい何をしているのですか」と言ったそうですが、私も似たような思いを抱きました。自分なりに“研究”して「一矢報いよう」とバカなことを考えて趣味 (?) の範囲で始めました。すると、英語と日本語を行ったり来たりするだけで、見えてくることがあることに気づきました。例えば、“競争的 (competitive)” であることが社会全体の利益につながると確実に言えるのは、「市場」にかかる形容詞であるときであって、価格決定力を持つような“競争力のある (competitive) ” 企業があるときには、その分だけ市場は “競争的” でなく、その結果として経済の効率性 (ムダのないこと) の達成が妨げられるはずです。また、英語のcapitalは日常語としては資産を意味しますが、経済学では資本の意味に使われます。昨今は、出口がなかなか見えない長期の金融緩和策の下で、「(資産価格の上昇による) キャピタル・ゲイン (資産の増加) が著しい一方、実物資本 (キャピタル) (あるいは実物資本への投資) の増加が乏しい」ことが特徴の一つですが、資産資本を使い分けない英語で説明するのはやや困難でしょう。世界中でベストセラーとなったピケティ氏の「21世紀の資本」は、「21世紀の資産」の方が日本語訳としてはより正確だと思います。
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経済学について考えたことを通じて、私なりのアメリカ体験とカルチャー・ショックについてお話ししたいと思っています。