2月28日(火)
<長寿寺―常楽寺―御上神社―近江八幡―八幡山>
湖南三山巡る国宝春動く
道雄
春めいて湖南仏に一目惚れ 静瑩
梅が香や古寺守る嫗の声高し みきを
早春の冷気を溶かす法話かな 弘道
薄氷の池に石積み弁天堂
弘道
冴え返る木立の中の塔の址 弘道
水温む石橋の先に塔と堂
弘道
再興を願いし寺や寒明くる 克介
神体は近江富士とや木の芽風 萬地郎
街並みの黒塗りまだら春うらら 静瑩
春嶺の根走る岩に城址かな 弘明
春泥や急いて下山の独り道 弘明
撮影を待つ江戸舟や春の昼 萬地郎
<長命寺―苗村神社>
八百八段琵琶湖一望遠霞 千恵麿
数唱え長命願う春の坂
克介
長命をいただく石段息白し たかのり
「も少し」と上るや春の長命寺 たかのり
見下ろすは霞の彼方三上山 一郎
目の下にきらめく湖は春の色 展子
千段の階の上から春の湖
弘道
山寺の古木の苔や長閑なり 尚子
囀りの包む神域古墳群
萬地郎
バスの友等いつしか黙す春夕焼け みきを
3月1日(水)
<比叡坂本―滋賀門跡―慈眼堂―日吉神社―西教寺>
見返れば早や霞初む滋賀の湖 みきを
石積みの寺町歩く春一日
尚子
旧友と雛うつくしむ比叡ふもと 恭子
里坊の隅華やぐや雛飾
克介
三月や暗闇照らす阿弥陀仏 弘明
風光る三間流れの桧皮葺
萬地郎
囀りもなき光秀の供養寺
萬地郎
<旅全般の感想と印象>
病癒え友とめぐりし古都の春 牧子
古都巡る友の笑顔や紅白梅 一郎
古都巡り寒さ吹き飛ぶ歩数かな 一郎
友と行くあと幾春を迎えなむ 克介
友の顔目に残りつつ雛しまう 展子
涅槃絵に心沁み入る年になり 恭子
古き友と遊ぶ近江路水温む 尚子
近江路に春を見出すジイジバアバ たかのり
あまてらすどこにおわすや春の雲 弘明
これはどこ湖南の春の塔三つ 弘明
第五回 修学旅行(2017年2月27日〜3月1日)
人の溢れる京都は避けて、選んだ時期が2月末。更に専門力を活かした大下さんの訪問地選定で、普段は行きにくい旧蹟をバスで巡る2泊三日の愉快な旅行となりました。今回は17名の参加でした。
大下さんには予め周到に資料を準備して頂き、更に訪問先との事前の調整もされていたために、解りやすく、スムーズに旅程がこなされ、大いに感謝するところです。
<上から 常楽寺、近江八幡の時代劇撮影、 長命寺、琵琶湖>
<浄瑠璃寺にて>
<上から 岩船寺の三重塔、当尾の石仏、恭仁京祉>
初日、京都駅集合。バス移動で木津川に沿う岩船寺から始まりました。同じく小振りな三重塔が建 てられている九体仏の浄瑠璃寺まで当尾を歩けば、多くの石仏が路傍に見られました。更に海住山寺から木津川市役所の職員さんの迎える恭仁宮祉へ向かいまし た。聖武天皇が平城京からここに都を遷し僅か4年で難波京へまた遷都したとか、今はその後に建てられた国分寺跡の礎石のみの世界だった。
二日目、滋賀県は湖南三山を巡る。長寿寺、常楽寺から御上神社を訪ねて近江八幡へ。近江牛を堪 能した後は自由散策。生憎、八幡山へのロープウェーは保守点検で休みだったが、徒歩で登った猛者もいた。八幡堀では時代劇の撮影もあり、なにやら江戸時代 に迷い込んだ感じ。事前予約のヴォーリズ記念館へ向かったり、近江商人の町を楽しんだりそれぞれの自由時間を楽しんだ。次いで808段の石段の先にある長命寺を3人の徒歩組とタクシー組に別れて登れば、山腹の伽藍から琵琶湖一望の景色が眼前に広がる。下る時も別れたが、時間差は余りなかった。更に竜王町の苗村神社を訪れてホテルに戻った。
三日目は比叡坂本へ電車で向かう。この「比叡山麓・石積みのある門前町」は権勢をふるった比叡 山延暦寺の台所を預かる町として琵琶湖に面した地の利を活かして栄えた。「穴太衆積みの石垣」の道を通り滋賀院門跡、旧竹林院、日吉神社を訪ねた。そこで 解散したが何人かは西教寺にまで足を延ばした。
事前の準備をされた大下さん、片岡君、田中君にはこころから感謝を申し上げます。宿泊、食事、足回り、どれも配慮が行き届いており、素晴らしい旅でした。 (内藤洋治 記)
<上から、慈眼堂裏の紫式部らの供養塔、日吉神社、旧竹林院にて>
2017年:湘南高校修学旅行:俳句作品
2月27日(月)
<木津川―岩船寺―当尾―浄瑠璃寺>
当尾路の石膚(いわはだ)仏春名のみ 恭子
野の巨石知らぬが仏のいぬふぐり 克介
わらい仏我らを誘う当尾春 展子
春の陽へほほえみ返し石仏 美枝子
微笑みてときにおぼろの磨崖仏 弘明
石仏の少し傾いで竹の秋
萬地郎
浄瑠璃寺白き馬酔木に師を思う 恭子
九体の阿弥陀みな美し花馬酔木 美枝子
上品も相いろいろや春和む 克介
冴え返るわが胸射貫く仏の眼 静瑩
<海住山寺―恭仁京>
憧れの塔と語らう春光
恭子
凍てゆるむ陶器の茄子の縁起椅子 萬地郎
春よ来い恭仁京の址の礎石にも 弘道
春風に雅な響き恭仁宮
美枝子
うたかたの栄華覚えず山眠る 克介