第67回湘友会セミナー報告 「国鉄改革から30年」

第67回湘友会セミナー参加記 ~伊東直彦君の講演を聴いて~

7月21日(土)、湘友会セミナーで、元JR貨物社長・会長を歴任した34回生伊藤直彦君の講演を聴いた。テーマは「国鉄改革から三十年――鉄道貨物の再生」。講演のきっかけとなったのは彼の著書『鉄道貨物再建、そして躍進』(日本経済新聞出版社) を34回生の同期会でいただいたことである。最初は表面的にあっさり読んでしまったが、セミナー委員の一人に、彼に話をしてもらってはどうかと提案してから、再度熟読した。すると彼らしさがあちこちに出ていて面白く読むことができた。特に、東日本大震災時の石油輸送問題での活躍ぶりには、彼の面目があふれていた。

伊藤君は、最近は貨物列車を見たことがない人が多いようだという。そうだろうか。

私が利用する藤沢駅では、元貨物線だった1・2番線をコンテナ列車が疾走して行くことをよく見かける。かつての黒や茶色の貨車ではなく、カラフルな企業のロゴ入りのコンテナ列車が「桃太郎」のヘッドマークをつけた機関車に引かれていく。JR関内駅では、根岸の石油基地からのタンク車が通過する場面によく出会う。車両の重さで高架ホームが地震のように揺れる。かつてはこのタンク車を怖いという思いでのみ見ていた。

阪神淡路大震災の高速道路倒壊のように、JRの高架線が破壊されたらどうなるか、倒壊しなくても脱線などで石油タンク車に火が入ったら、と思うと、地震恐怖症気味の私には、このタンク車はとても恐ろしいものに思えた。できれば、こういう一般線路を、あまり走ってほしくないという思いを持ったこともあった。しかしタンク車への私の見方が変わりつつある。

東日本大震災では、タンクローリーによる石油輸送が道路寸断などから不可能となり、消防車や救急車の燃料さえもなくなる心配が出た。その時に、根岸から大迂回をして盛岡や郡山の基地へ石油列車が走り、東北の燃料危機を救った。指揮をしたのが、伊藤君。停電による列車停止の事態を回避したのが、菅内閣の経産省副大臣であった池田元久君。二人は34回卒業の同期生だった。二人に人間関係があったことが、迅速的確な事態対応を導く大きな力となった。講演には、両君の対話が飛び入りし、一層の迫真性があった。

なお、伊藤君が日本物流団体連合会会長だった時に、副会長だったのが、上野孝君、即ち湘友会会長の38回生。ここにも湘南高校の不思議なえにしがあった。もっと多くの方に聞いてもらいたい講演だった。しかし、連日の高温続きで、熱中症の心配からか、予定より参加者が減ってしまったことが残念だった。

石井 喬 (34回)