- 日時: 2019年 2月23日(土) 13:30~15:30
- 場所: 湘南高校 歴史館 スタジオ
- テーマ: 増えすぎたシカとオオカミの再導入
- 講師: 畑 俊一 氏 (30回生)
- 対象: 湘南高校 卒業生、在校生、教職員
- 参加費: 無料
- 事前申込: 不要
【概要】
近年、全国的に増え続けているシカ、イノシシ、アライグマなどの屋製動物は、山林や田畑に膨大な額の農林業被害を発生させているだけではありません。シカは特に全国の推測生息数が300万頭を超えるとされていますが、ごく最近、ヒトの致死性疾患である重症熱性血小板減少症候群ウイルス (SFTFウイルス) を媒介するマダニ類のリザーバーであることが明らかにされました。増えすぎているシカはまさに人命にかかわる深刻な問題を私たちの生活にもたらしているのです。しかしながら今、これという抜本的な有効策はなくとても困っている状況です。
理由ははっきりしています。これらの動物の唯一の天敵であるオオカミに関する誤解や悪意のある宣伝によるものでした。
オオカミは日本だけでなく、これまでもいろいろな地域で虐待され絶滅に追い込まれてきています。しかし欧米社会は、20世紀後半になってようやくこの過ちに気付き、一転してオオカミの保護、復活に舵を切ったのです。オオカミが人に危険な動物ではなく、自然界でかけがえのない存在であることに気がついたからです。
アメリカの事例です。イエローストーン国立公園の自然は、オオカミの絶滅によって起こったシカの増えすぎと食害により、荒廃し、破壊されつくしていました。しかし現在、オオカミの再導入と復活が公園の生物多様性を著しく回復させています。公園を訪れる人たちはオオカミを通して自然への理解を深めています。
一方、森が少なく人里と自然領域が入り組んで存在するヨーロッパでも近年、オオカミは保護されています。でも、人を襲う事件は起きていません。復活したオオカミは増え過ぎることなく、獲物を絶滅させることもなく、人に危害を与える心配もありません。
江戸時代には大きな深い山のみならず、里山と村落の環境が近接しあう地域にもオオカミは生息していました。シカはイノシシなどを捕食していましたが、人を襲う動物とは考えられていませんでした。
オオカミは自然を守り、人と共存することが十分可能な動物なのです。日本でもオオカミの再導入について今、真剣に考える時期に直面していると言えるでしょう。