第74回 湘友会セミナー報告 「増えすぎたシカとオオカミの再導入」

  • 日時: 2019年 2月23日(土) 13:30~15:30
  • 場所: 湘南高校 歴史館 スタジオ
  • テーマ: 増えすぎたシカとオオカミの再導入
  • 講師: 畑 俊一 氏 (30回生)

畑さんは、本校在学中は生物研究部に所属し、その後、都立大学、米国マサチューセッツ州海洋生物研究所の研究員、中外製薬、糖鎖工学研究所などでのご勤務の傍ら、日本野鳥の会、日本オオカミ協会神奈川県支部、日本クマネットワーク、丹沢ブナ党会員など色々な組織で活躍されている。そういう活動の中で、シカの爆発的な増殖、それによる森林破壊や農山村の生活への負荷などの問題を研究対処されてきた。

 

オオカミは、「赤ずきんちゃん」などの童話や昔話などでこわい動物と思われているが、オオカミはシカの天敵ではあっても人間を襲うことはなかった。ヨーロッパでも日本でも家畜を襲うことはあったので、「こわい動物」という固定観念が生まれたようだ。(狂犬病を罹患している場合には、別の問題)

なお、江戸・明治の頃、日本の山には山犬と称される野犬の集団が多数生息していた。山犬は、時に山村の人家を襲って人身被害をもたらす存在であった。現在、オオカミが人間を襲おうという誤解の一因にもなっている。

EUでは、1979年のベルン協定により、オオカミを含む野生動物の保護が立法化された。実際に25,000頭のハイイロオオカミがヨーロッパ29カ国に棲息している。米国では、1995年に14頭のハイイロオオカミが、カナダ西部から再導入された。アジアでは、モンゴルに10,000頭以上、中国、ロシア東部 (ウスリー) にも多数棲息している。なお、北半球に広く棲息しているオオカミは、かつて日本にいたオオカミも含めてすべてハイイロオカミなのだそうだ。日本では、明治政府が軍馬を繁殖させるにあたってオオカミを目の敵にしたこともあったという。(生体系を維持するためにも、世界は平和でなくてはならない)

シカの爆発的な増加による森林破壊に対処するためにも、オオカミを導入することを検討すべく、オオカミ協会は、社会環境づくりに邁進している。

オオカミの棲息というめったに考える機会もない問題に、目を開かせて頂いた貴重な2時間であった。