第76回湘友会セミナー報告「ロボットと生きる」

日時: 2019年4月20日(土) 午後2時~4時
場所: 湘南高校 歴史館 スタジオ
テーマ: ロボットと生きる
講師: 細田祐司氏 (48回生、一般社団法人 日本ロボット学会理事・事務局長)

現在、多くの社会分野でロボットが活用され、また、人工知能技術の著しい進展で、社会の中で「人とロボットのあり方」も考えなければならなくなりました。48回生 細田さんは電気通信大学大学院卒業後、日立製作所機械研究所入所し、現在、一般社団法人日本ロボット学会に勤務し、大学時代から40年以上、ロボットの研究開発に携わっています。そこで、今回のセミナーは、これまでのロボット研究開発の歴史から、ロボットと暮らすための課題、将来像などについて、講演いただきました。この報告書では参加できなかった湘友会の皆様に知っていただきたい講演内容をまとめてみました。

【講演概要】
1. ロボットの定義・・・・・・車、飛行機、洗濯機、掃除機等もロボット

2. 学術研究から社会実装へ

・・・ロボット工学は、学際的領域の基礎学問(機械工学、電子工学、制御理論、人口知能)
現在・・ロボット工学は、仕様工学、サービス工学(社会問題の解決へ)
新しい価値・文化を創る (ロボットがいたらどんな世界になるか?)
モノツクリ (How to Do) から コトヅクリ (What to Do) へ
ロボット工学から ロボット学 (異文化交流) へ

3. ロボットの存在意義

(1) 人間ができないことの実現

・コスト低減、高精度化、高速化、不休作業 …… 産業ロボットによる製造業の自動化
・労働人口不足で維持できなくなる作業 …… 3K作業離れ、農業の跡継ぎ問題 等
・人が入れない空間での作業 …… 微細手術、体内検査、配管作業 等
・人間に危険が及ぶ極限環境での作業 …… 原子力プラント内作業、火山、地震 等

(2) 人間の機能の補填・拡張

・パワーアシスト、盲人誘導、義手・義足、訓練支援等

(3) 人の友達・コミュニケーション支援

・高齢者見守り・話相手、教育、通訳、受付、癒し等

(4) 教育

・教材としてのロボット

4. 人とロボットとの共生

(1) ロボット工学三原則は守られるのか

アイザック・アシモフ著「われはロボット」より
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間に与えられて命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

ロボット・AIを作る者・使う者が真剣に議論しなければならない。

(2) AIは人の仕事を奪うのか?

現状のAIは、過去の経験データに基づき妥当な解答を提示するが、未経験の事象に対しては、的確な解答が出せない。医療診断、裁判の過去判決例調査等には有力な手段で、そのような仕事はAIに置き換わっていくと思われている。AIの代替え作業により、人間はAIには出来ない人間らしい、創造的な仕事に就くことができる。そのためには、AIを便利な道具として使いこなす教育・訓練・文化が必要で、人間としての洞察・判断ができる能力の育成が必須となる。

(3) ロボットの進化に伴う課題

事故回避での倫理的な課題
倫理的な判断基準(プログラム)が作れるのか、総合的かつ的確な状況判断ができるのか?
事故責任に対する法的課題
例題:完全自動運転の事故責任はだれが取れるのか?
搭乗者or自動車オーナーor自動車メーカー(PL法の見直し)or自動車自身(人格付与?)

(4) 人間のためのロボットに向けて(人を幸せにするためのロボットでありたい)

サービスと安全は人への共感からはじまる。ロボットにも人に共感する能力が必要。

5. まとめ ロボットと生きる

起 : 人がより幸せに安心して暮らせる世界を創り維持する
承 : より良い文化・社会環境、自然環境の在り方を考える
転 : 「どうすべきか?」から「どうしたいのか?」へ
結 : その解の一つとして、人とロボットとの共生を考える

ロボットを考えること=人間を知り社会を考えること
中川 俊男 (48回生)

湘南高校2・3年を担任された杉山先生を囲んで記念写真