第109回セミナー報告「琉球古典芸能の世界 ~歌・踊り・祈り~」

■109回湘友会セミナーが開催されました。
日時: 2024年10月19日(土) 14時~16時
場所: 湘南高校 歴史館スタジオ
テーマ: 琉球古典芸能の世界 ~歌・踊り・祈り~
講師: 輪島 達郎氏 (全57回生)

徳原清文に師事。琉球古典音楽 野村流音楽協会 師範。青山学院大学 コミュニティ人間科学部 准教授。専門は琉球・沖縄の文化と社会。

舞踊実演: 赤嶺 奈津子 (※1), 赤嶺 真希 (※2)

※1… 那覇市出身。琉球舞踊八曄流教師。6歳で八曄(はちよう)流家元・前田千加子師に入門、昭和音楽大学・同大学院でオペラを学ぶ。2020年度 沖縄タイムス芸術選賞奨励賞。港区三田で妹・真希とともに後進の指導にあたる。オペラ歌手としても国内外の舞台に立つ。
※2… 那覇市出身。琉球舞踊八曄流教師。6歳で八曄流家元・前田千加子師に入門。青山学院女子短期大学英文学科卒。2015年度 沖縄タイムス伝統芸能選考会最高賞。港区三田で姉・奈津子とともに後進の指導にあたる。

■セミナーの講演概要
2024年10月中旬、季節外れの暑さが続く中、「琉球古典芸能の世界~歌・踊り・祈り~」の講演会が開催されました。この日は藤沢市でも最高気温が29度に達し、まるで夏が戻ってきたような一日でした。講師の輪島氏が琉球王府の役人の正装で登壇すると、会場の雰囲気が一気に引き締まり、参加者の興味を引きつけました。会場は満席となり、終了後の懇親会にも約30名が参加し、大いに盛り上がりました。
講演の最初には、輪島氏の同期である池辺前校長から、輪島氏についての紹介がありました。当時から優秀で、ジャズの演奏がプロのように上手く、将来が楽しみな存在だったとのことです。その後、輪島氏ご本人が、自身のプロフィールについて語りました。小学生の頃、復帰直後の沖縄で過ごしたことで、沖縄の言葉の響きや音楽の感覚、人付き合いの距離感などが自然と身についたという話が印象的でした。

講師・輪島達郎氏

司会・池辺直孝前校長(全57回生)

その後、琉球古典芸能の歴史や文化的背景について、具体的なエピソードを交えながら解説が行われました。
琉球古典芸能は、琉球王国時代に中国や日本との文化交流の中で生まれました。宮廷芸能としての格式高い踊りや音楽、庶民に親しまれた民謡や商業演劇、さらには女性舞踊家による流派の形成など、多様な要素が複雑に絡み合いながら現在の形になったことが、時代背景と共に詳しく説明されました。琉球の人々が異文化に影響を受けつつも、独自のアイデンティティを追求し続けた結果、特有の芸術文化が発展したのです。

講演では、実演も大きな見どころでした。赤嶺奈津子さんと真希さん姉妹が琉球古典芸能の衣装をまとい、輪島氏の三線の演奏と歌に合わせて古典舞踊や雑踊を披露しました。この実演は、琉球芸能の優雅さや繊細さを直に感じる貴重な機会となりました。また、踊りの背景や技法、所作の特徴、歌詞の意味、さらには衣装や髪結い(からじゆい)、房指輪などについても丁寧な解説があり、琉球芸能の魅力について語られました。能や狂言など日本の伝統芸能からの影響が見られる一方で、指先や足の細やかな動き、視線の使い方など、琉球独特の表現が随所に見られることが印象的でした。実演を間近で観られたことで、その繊細さや奥深さを改めて実感することができました。

びんがた衣装で諸屯 (しゅどぅん) を踊る赤嶺奈津子さん

紺地 (くんじー) の衣装で浜千鳥 (ちじゅやー) を踊る赤嶺真希さん

勇壮に高平良萬歳 (たかでーらまんざい) を踊る赤嶺奈津子さん

房指輪:上左から 葉,蝶,花,扇,桃,ざくろ,魚  房指輪を見せる赤嶺奈津子さん

髪結い (からじゆい) についての説明

参加者からは「歴史的背景と芸能の実演を通じて、琉球の文化の奥深さを初めて感じた」「踊りや所作の美しさに魅了された」「輪島氏の穏やかな語り口が心地よかった」など、多くの感想が寄せられました。この講演を機に、琉球芸能を新たな視点で楽しむきっかけになったという声も聞かれました。

輪島氏をはじめ、赤嶺奈津子さん、真希さん、そして湘南セミナーの関係者の皆さま、この素晴らしい機会を提供していただいたことを心から感謝いたします。ありがとうございました。

左から輪島達郎、赤嶺奈津子、赤嶺真希の各氏

セミナー参加者のみなさん

■セミナー参加者の感想
同期生の印象、感想を一部ご紹介させて頂きます。

  • 輪島くんの声と穏やかな話し方が心地良くて会場全体が何か大きな優しいものに包まれているようでしたね。
    赤嶺姉妹さんは強い怒りや切なさを丁寧に踊りに込められていて、それがとても美しくて引き込まれました。
  • 琉球芸能がどのように生まれたのか、歴史的背景からの講義はとてもわかりやすく、その後の実演は、あんなに間近で鑑賞することができて、感動しました。琉球芸能独特の所作はどれも素敵で、特に手の動き、指先の動きが綺麗で魅了されました。とても貴重な体験でした。ありがとうございました。
  • 私もまだ興奮さめやらん… 輪島くんの歌声がリピートしています。
    芸能が歴史と共にあることをわかりやすく説明してくださり、小さな島の人々の悲しさ、怒り、そして島の風や温度、風土と共にあるリズムの中で育まれたものが、男や女を超えて、変化を怖がらずに今日まで長らえている底力も感じました。あんなに至近距離で感じ取れた事は幸いです!
    学者さんとしても、指導者としても輪島くんの懐が広いことは知っていましたが、芸歴14年…まだまだ修行を続けられる姿勢も素敵です。
    そして、去年は参加できなかったので、今年はこうして皆さんとご一緒出来たのも、とても嬉しい事でした。湘南の繋がりに感謝です。ありがとうございました!!
  • 輪島くんに三線を教わったことがあり、それ以来三線が大好きになりました。沖縄旅行も好きで何度か訪れたことはありますが、琉球芸能について深く知る機会はこれまでありませんでした。今回の学びを通じて、次の旅行ではこれまでとは異なる視点で沖縄を楽しめそうです。輪島くん、赤嶺姉妹のお二人、本当にありがとうございました。
  • 講演内容で歴史や歌詞の意味とかもわかった上での実演、そして懇親会で色々なお話が伺えてとても楽しかったです。輪島さん、そしてセミナー委員の皆様、幹事のみなさま、どうもありがとうございました。
  • 情念のこもった舞をご披露いただいた赤嶺姉妹のお二人、感動しました。皆さまのご尽力により、素晴らしい1日を共有することができました!
報告文/高梨(阪尾)郁子 (全57回生)