第21回湘友会セミナー報告

第21回湘友会セミナーは、9月20日(土曜日)の午後に湘南高校歴史館のスタジオで、杉本孝さん(40回生)を講師として「電電公社民営化の舞台裏」というテーマで開かれました。以下に、当日の講演の概要を、報告者の感想なども交えながら記します。

電電公社は1995(昭和60)年4月に民営化されて、NTTが発足しました。杉本さんは、これより前には、「官」としての電電公社に、これ以降は「民」としてのNTTとその関連会社に在籍されて、今日に至っています。特に、民営化直前の時期には、真藤総裁の下で、民営化を大きな「ミッション」とする部署の中核となる業務に携わり、この日の講演では、このような歴史的事業に深く関った体験からの貴重なお話に、耳を傾けることができました。

「行政改革」が大きなテーマであった時代に方向づけられた「民営化」は、それまでの「公社」(=官)としての歴史の長さや独占的な役割の大きさがあるだけに、実現に向けて乗り越えるべき課題や困難が、次々に現れました。それでも、電電公社に関る様々な立場の人々による多様な動きがある中で、民間企業出身の真藤総裁の、人気を伴った強いリーダーシップが、民営化への道を確実なものとしていきました。この時、真藤総裁が、民営化への準備の各段階のプロセスを、段階ごとに小冊子を作って全社員に配布し、全体への周知や理解を図った、という点が、報告者には印象的でした。また、杉本さんが民営化への前進のお話の中で、「いったん、いついつまでに、と期限が決まると、少々大変
でもそれをやってしまう、という点は、日本人の美徳ではないか」と言われた言葉は、湘南高校の校風にも一脈通じるものがあるように感じました。

民営化の前後の状況の中でずっと過ごして来られた杉本さんは、「官」であった電電公社が「民」へと移り変わり、独占的な立場では無くなって競争の場に置かれたり、予算制度などの様々な制約に縛られることが少なくなったりすることによって、利用者の側に立った、より柔軟で有効な対処が可能になった、というプラス面も、指摘されました。そ
して、民営化が無事に成し遂げられたのは、それに関る要素の全体がうまく働いて、「天・地・人」に恵まれたためだ、とまとめられました。

以上の概略と感想に加えて、報告者としては、杉本さんが終始、穏やかな様子で、おそらく、その時その時のご自身の人生を、心の中で振り返ったり確認したりされつつ、楽しそうにお話しになっていたのが、印象に残っています。

杉本さん、ありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

                     報告者:伊藤泰史(51回生)