第27回湘友会セミナー報告

2015年3月14日、テーマ:「裁判官の役割」 講師:原田國男氏 (38回生、慶応義塾大学法科大学院客員教授(専任)弁護士)

原田さんのお話は、刑事裁判官としての40年以上のご経歴を踏まえて次のように行われた。

1. 事実認定とは何か?
・有罪には、「合理的な疑いを超えた証明が必要」。
・「疑わしきは罰せず」の原則。
・「10人の真犯人を逃しても、1人の無辜を処罰すべきでない」→「100人の真犯人を逃しても、1人の無辜を処罰すべきでない」と言えるのか?1000人では?

2. 事実認定の構造
・「神のみぞ知る真実」は嘘。→目の前の被告人が知っている。
・判決は、先生たる被告人に対する学生である裁判官の答案である。正しい判決か誤った判決かを判定できるのは、被告人だけ。

3. 事実認定の難しさ
・客観的証拠が決め手となる。
・証人の偽証を見抜くのは極めて困難である。
・最も嘘を言っているのではないかと思われる被告人が実は本当のことを述べていることがある。

4. 冤罪論
① 世論・マスコミの見方
② 冤罪不可避論 (制度リスク論)
③ 冤罪不存在論 (裁判官無謬論)

5. 大きな変化
① DNA等の客観的証拠により本当に真実が明らかに。
② 誰でもいつでも冤罪被害者に→映画「それでもボクはやってない」
③ だれでもいつでも冤罪加害者に(裁判員裁判)
④ 99%有罪神話の崩壊

6. 冤罪を防ぐための3本の矢
① 取調の全過程可視化
② 人質司法の解消
③ 冤罪原因の究明

マスコミをにぎわした事件や、裁判員制度の現状、死刑という制度、その他、お話は縦横無尽に飛びまわり、縁がなかったと思っていた司法の世界が、身近に感じられた。

4人の現役生と、先生がお一人 出席されて、質疑応答も活発に行われ、主催者としては大変うれしいセミナーであった。