第30回湘友会セミナー報告

第30回湘友会セミナーは「湘南・西湘海岸における防災・減災」と題して講師に66回生の田島芳満先生をお招きし、6月27日に 湘友会歴史館スタジオで開催されました。田島さんは現在、東京大学大学院工学系研究科社会基盤専攻教授で、海岸沿岸環境研究室においでです。

セミナーでは、湘南・西湘海岸の防災・減災への方策を考える上で、最も重要なリスクアセスメントとして、津波高潮高波のメカニズムの研究成果の報告がありました。

東日本大震災(2011年)、ハリケーンカトリーナ(2005年)、バングラデシュのサイクロン(2007年)、伊勢湾台風(1959年)、西湘バイパスの高波被害(2007, 2008年)の海岸沿岸被災状況を、気象情報のスーパーコンピューター解析と、実際被害の調査分析により、セミナーは進みました。

まず、津波の伝わり方は水深の二分の一乗に比例し、津波は地震の地殻変動メカニズムから、東日本大震災では波長が300kmにもなる長い波でもあったといった分析がありました。そのことから水深1500mの相模トラフで地震が発生すると、津波の速度は非常に速く、時速数百キロにもなり、数分で湘南海岸に到達することも分かりました。

そして、公表されている津波浸水予測範囲では、浸水深50cmでも、波動により1~2mの波による変動が生じ、その中を歩いたりして避難するのは困難との現実が示されました。

高潮では、台風の低気圧により海水が吸い上げられる高潮被害が予測以上に大きい現象が観測されていて、分析によれば、台風とともに動く波があり、高潮と相乗効果を生み出し高波となっているという、最新の研究成果も紹介されました。

西湘海岸に押し寄せる高波は、砂浜が消失し、深い湾で発生した高波が、直接押し寄せることが原因であり、砂浜の保全が被害の軽減に必要であると力説されました。

質疑応答では

①: 目撃した相模湾の高波についての質疑がありました。
回答:「湘南海岸に津波のような高波が押し寄せるのは、遠い南方の大きな台風による波が重なって到達することがあり、台風が巨大化している近年では、注意が必要。」と説明されました。

②: 町内会の取り組みで、津波に備えた避難時間確保の方法を検討されている方から、「予想される震源地直近からの警報システムの整備の可能性」についての質疑がありました。
回答:「深い相模トラフで発生する地震では津波は数分で到達してしまい、警報システムの効果が期待できない。相模トラフの南の慶長型地震では距離があり、役に立つ可能性はあるかもしれない。」というコメントをいただきました。

セミナーでは公表されている湘南海岸・西湘海岸におしよせる津波被害予測が、科学的な解析と被害調査の分析から説明されました。この地に住む私たちセミナー参加者は、防災・減災の取り組みの連携と発展、地域の避難計画や町内の防災訓練に真摯に期待を寄せました。

以上