第35回湘友会セミナー報告


日時: 2015年 11月14日(土) 14時~16時
場所: 湘南高校 歴史館スタジオ
テーマ: 「相模湾は宝だ!」
講師: 石戸谷 博範 いしどや ひろのり 氏 (48回生)

石戸谷博範さんは、定置網の専門家として、永年にわたり、神奈川県技術センター相模湾試験場で活躍しました。今回は、相模湾について、意外と知らないこと、 驚くような事実を盛り込み、の相模湾から未来の相模湾へというテーマでのお話がありました。
.

1. 相模湾の豊かな海を支える 3つのキーワード

① 水深1,200mの深い海 日本三大深海湾 相模湾・富山湾・駿河湾
② 南に続く伊豆諸島 伊豆諸島は黒潮が乗り越える海底山脈
③ 赤道から来る黒潮 幅100km 深さ1,000m 流れの速さ 2m/秒の太平洋の大河
④ ・・・・ そして、4つ目のキーワードは後程、お話します。
.

2. 相模湾のさかなの魅力

相模湾には、魚類1,600種類 (有用種は約300種)、カニ類350種類、貝類1,100種類、藻類380種類が棲息する。人口3,700万人が生活する首都圏に息づく世界でも数少ない豊かな海です。
.

3. 自然の力を知り自らを変える 現場の課題に挑む 定置網の大きな課題

1990(平成2)年当時、相模湾の定置網漁業は高齢化と度重なる急潮 (強烈に早い潮流) 被害により経営が疲弊しつつあった。「あと 5年も もたねーよ」と漁場の大船頭が淋しく語った。定置網破壊=数億円損失。その苦境からいかに立ち直ったか。神奈川県は急潮に耐久出来る定置網を回流水槽実験により開発し、現場に導入して被害を大幅に減少させることに成功した。(回流水槽とは:海の中の流れや波を再現する実験装置)

小田原沖の定置網と湘南高校全体の比較
.

4. 明日を目指す 現場の取り組み

・研究成果により定置網の急潮被害が減少し、安定経営が実現した。定置網漁場の従事者の平均年齢は1990年当時の60歳台から現在は30歳台に若返り、漁業に明るい将来展望が開けた。

相模湾の海の幸で握った寿司

.

5. 相模湾の海と漁業の未来

・昭和29年の小田原のブリ漁カラー映像を紹介。61年前=48回生の生まれた1954年には小田原でブリが57万尾漁獲された。しかし、東京オリンピック1964年頃からブリは減少し始め、少ない年には100尾未満となり、漁業は苦境に陥った。
・漁師さんの言い伝えに「(ブナ) の木一本、鰤(ブリ) 千本」と言う言葉があり、森林や河川の流れの豊かさがが重要であることが知られている。ブリは河川にダムが出来、海岸道路が整備されたのと同時期から漁獲が激減している。
・青葉潮 (魚は海に映る山の緑を慕ってくる) という言葉がある。豊かな森林に降った雨が河川から海に至る自然の流れが遮断 (ダムや取水堰) されたことは、自然界に大きなマイナスとなっている。
・今、相模湾の海と浜は、真水と真砂を求めている。これは日本列島全体にも言えることであろう。
.

6. 相模湾の豊かな海を支える 4番目のキーワード

キーワードの④番目は、「箱根、丹沢、大山の豊かな清流 酒匂川、相模川、豊かな砂浜、そして自然と共生する都市生活」であり、私たちは知恵を絞ってそれを実現する方向で進むべきである。
・小田原が生んだ二宮尊徳翁の言葉に「経済なき道徳は戯言であり、道徳なき経済は犯罪である。」がある。開発を行うかどうかを判断する時には、様々な観点から真摯にその影響を考え、長い目で方向決定をするべきである。
・次の世代を担う子供たち若者たちに海や自然の大切さを伝えたい。
近くの川やから安心して食べられるお魚がこれからも ずーっと とれること、その循環する幸福が日本発の国際的な技術となることが大切である。