第39回 湘友会セミナー報告

  • 日時:2016年3月5日(土)13:30~15:30
  • 場所:湘南高校歴史館スタジオ
  • 演題:何故、日本サッカーのプロ化は実現したのか ~「人、物、金」から考察するJリーグ設立の舞台裏~
  • 講師:篠塚毅氏(54回生、サッカー部主将、元Jリーグ初代事業部長)

現役当時サッカー部主将だった篠塚さんは「無口」「硬派」というイメージの存在でしたが、今回、プロ化現場での体験を情熱的にまた、時にコミカルに語る姿に聴講者は少なからず新鮮な驚きを覚えました。また「Jリーグ設立」というピンポイントの話ではなく、 篠塚さんご自身がその後従事された「ラグビートップリーグ設立」「バスケットボール JBL設立」という他競技での貴重な経験も踏まえ、日本スポーツの歴史、そして1964年東京五輪の功罪という視点からサッカー界の改革を判りやすく説明頂きました。以下、篠塚さんが「キーワード」として指摘した項目を中心に講演の概要を記しておきます。

第1部 「人」編=東京五輪シンドロームを克服せよ

日本のスポーツ界は教育現場、特に中体連、高体連のボランティア精神により支えられ発展してきた。しかし1964年東京五輪を経てその組織は硬直化、1970年代以降の「グローバル化」に対応できず低迷していく。ここでサッカー界が「世界で戦えないスポーツは衰退する」との共通認識を持ち、Jリーグ設立を起爆剤としてサッカー界全体の組織改革に踏み込んだことが重要。また川淵チェアマンというカリスマリーダーが出現したが、彼を陰で支え続けた先人たちの功績も見逃してはならない。

第2部 「物」編=サッカーの常識を覆せ

サッカーにおける商品は「試合」そのもの。Jリーグはあくまで「顧客志向」でリーグ戦のフォーマットを策定、試合を陰で支える「審判」「指導者」のレベルアップのためにライセンス制度を再構築、公共施設であるスタジアムの観戦環境の向上のための活動も並行して行ってきた。特にスタジアム問題は、篠塚さん本人が主担当となり、日々まさに七転八倒、苦難の歩みであった。

第3部 「金」編=新たなパートナーとの挑戦

Jリーグ設立にあたり参入希望クラブに対し強固な経済基盤が求められたこと、サッカー界の過去のしがらみに囚われることなく新たなパートナーと「WIN WINのサイクル」を構築したこと、そして「プロリーグ設立」のみならず「ワールドカップ招致」「サッカーくじ(TOTO)導入」という「3本の矢」により現在まで継続するリーグ基盤が作られたことが説明された。そして、日本サッカーが低迷していた時代にこの遠大な計画を策定し、実行した諸先輩への感謝の言葉が述べられ講演を終了した。

尚、講演中には「Jリーグ開幕セレモニー」「全国高校サッカー」「三菱ダイヤモンド サッカー」等の懐かしい映像、そして篠塚さんの引退試合となった「1978年高校選手権 神奈川予選準決勝、湘南対旭(TVKテレビ)」の「超レア映像」も流され、サプライズ満載の2時間となりました。(報告: 有馬純夫)