湘友会 (36回) 第12回 関西修学旅行 (中井権次の龍を訪ねて)

湘友会 (36回35組) 第12回 関西修学旅行 (2025年6月3日~5日)

まだまだ若いと思っている元気な仲間が、大下さんのきめの細かい準備と尽力で、ユニークな関西修学旅行を楽しみました。新しく荻野夫妻と笠原君も加わって、13名の愉快な旅となりました。

大阪万博やインバウンドでの混雑を避けて、中井権次一統の龍の彫り物を主体に巡る、京丹後、舞鶴、天橋立への旅になりました。

今回も大下さんは事前に資料を参加者へ郵送して呉れました。そして、旅行後には俳句愛好者から俳句が寄せられました。

京都駅に10時30分に全員集合し、八条口から舞鶴のコスモ観光バスに搭乗し雨の町へ、そして、舞鶴へ向けて出発!
このバス会社には旅を通して大変にお世話になりました。

車窓から伊吹を背ナに麦の秋  幹男 水無月や八十路の友とバスの旅  展子
一日目:

雨の降りしきる中、最初の訪問先の西光寺 (南丹市:浄土真宗本願寺派) では、丹波の名彫刻師 中井権次一統の六代目作とされる見事な龍の欄間のある本堂へご住職が自ら案内され、この寺にまつわる様々な事を時間たっぷりと話された。内陣には仏舎利を収めた金色の入れ物が置かれ、それを開いて拝ませて頂いた。

この寺は文覚上人所縁の寺で、人妻に横恋慕して、誤ってその女性、袈裟御前の首をはねたとされる大太刀なども置かれている。

火災などで困窮した以前の住職たちが売ったとされる仏像も戻って、今の炭山住職が寺の建て直しを進めている。そんな感動的な話を聴き、一同大いに感じ入ってご芳志を受け取ってもらった。

 

 

若葉分け古刹の龍を訪ねけり    玲 若葉雨龍護る寺の仏たち    恭子
丹後路の権次の龍や梅雨盛り    道雄 六月や欄間の龍を説く方丈   道雄
薫風や工匠ら鑿の龍重し     恭子 由来説く僧の張り切り梅雨に入る 幹男
五月雨や権次の龍の生き生きと  幹男 南丹の龍の住む寺夏木立    尚子

昼食後は「丹後のもみじ寺」とも呼ばれ、平安初期に創建された真言宗東寺派の金剛院を訪ねる。秋には見事なもみじに囲まれるお寺だが、この時期の雨上がりの若楓の緑も実に瑞々しい。宝物殿に所蔵されている仏像の中でも、快慶作とされる執金剛神と深沙大将の立像が注目だ。三尺ほどの比較的小さな像だが、全館の電気を消して昔の様に小さな灯りだけにした時、立像の眼力は拝む者へ突き刺さる様な迫力があった。

細川幽斎の庭などもあるらしいが、ここでは三重塔が下から見上げるだけでなく、本堂への石段を登れば、上からも若楓を通して観る事が出来た。この本堂の軒の組物にも中井権次一統の龍の彫り物などが見事に作られている。

金剛院若葉の蔭に三重の塔  玲 若楓古刹の龍へ雨したる   照子
龍睨む石段奥や若葉冷    道雄 木下闇抜けて古塔と対面す  恭子
結葉を室町の塔負いて立つ  恭子 沙悟浄の睨む炎気や仄灯り  萬地郎
古刹への百八段の苔青し  尚子 青楓のつつむ閑さ金剛院  展子
赤花を覆い隠すや青楓   展子 新緑や古刹を守る若き僧  萬地郎

金剛院から舞鶴市内に入り、バスの窓から赤煉瓦パーク、海上自衛隊の様子を眺めながら、五老スカイタワーへ向かう。入り組んだ舞鶴の海岸線を一望出来た。

湾抱く森の高みの山法師   恭子 雨晴れて深き入江へ海霧流る   恭子
海守る舞鶴湾や風薫る    玲 梅雨空や舞鶴港に父想う     道雄
青葉潮イージス艦は待機中  幹男 梅雨雲やナホトカを指す方位盤  萬地郎
二日目:

昨日の雨もすっかり上がって朝から快晴の旅が続く。バスにて高速道路で香美町の大乗寺 (高野山真言宗) へ向かった。

この寺は応挙寺とも云われ、円山応挙とその弟子達による障壁画を観る事が出来る。時に原画もあるが、殆どはデジタルで再生した物が襖絵として使われている。昨年の大塚国際美術館を思い出すが、規模は極めて小さい。

円山応挙がまだ無名の頃、当時のこの寺の住職がその才能を見い出し、銀三貫目を与え、それにて江戸で学び、名を成した応挙は、後に息子や弟子たちを連れてこの寺に戻り、仏間など13の部屋の襖絵を描いたと云われている。

この大乗寺にも、中井権次一統の龍の彫り物が欄間や山門に設えてある。

  

梅雨晴れや同期で巡る権次の龍  道雄 夏木立龍に守られ阿弥陀堂  玲
新緑の応挙の寺や龍在す     道雄 梅雨寒や円熟応挙の複製画  萬地郎

昼食を済ませて、次に余部鉄橋へ向かう。JR山陰本線の鎧駅と余部駅の間にある高さ40m以上の鉄橋で、ここを通過する際には乗客は美しい海と小さな漁 村が眺められた。1986年に強風により回送列車が転落し、列車の乗務員1名と落ちた先のカニ加工工場の従業員5人が亡くなった。事故現場となった余部鉄 橋は、2010年に新橋梁の併用開始に伴い、その一部が「空の駅」として保存整備されて観光名所になった。

  

余部の鉄橋越しに初夏の海  玲 青あらしにわか撮り鉄余部橋  牧子
海近き天空の路青嵐     恭子 餘部の遺構に望む初夏の海   幹男

バスでの移動時間を使って平家物語の大下講座があった。今回は「平重盛」と「木曽義仲」にハイライトを当てての丁寧な解説と資料。大下女史は立ちっぱなしで、平家の都落ちの段を解説された。単なる歴史の流れだけでなく、平家や源氏の武士のグループへの視点、複雑な人間関係などを弁じた。有難い事に、丁寧な資料もあるので、旅行後も学べるように準備してくれた。

「重盛」や卯の花くたしの京を出る  萬地郎 義仲の最期を語る梅雨最中  展子

やがてバスは美しい海岸線を走り、城崎温泉へ向かい、温泉守護の寺、温泉寺を訪ねた。この寺は天平10年 (738) に開設された古刹で、末代山温泉寺の山号・寺号は、聖武天皇より「城崎温泉の守護寺」とし賜ったとされ、高野山真言宗別格本山とこの寺のブログに記されている。

 

涼しさや温泉寺へ手合すYOU  萬地郎

高速道路から外れた処では、田植えが済んだばかりの早苗田が広がり、コウノトリ探しも楽しい。豊岡市ではコウノトリが住み易い環境作りに勤しんでいるため、「たいてい居るから」とのバスのドライバーの話から窓の外を注視する。概ねはサギの様だが、暫くして、確かに田で餌を探しているコウノトリを見つけることが出来た。

 

梅雨晴れや宮津の海を友と行く  玲 早苗田にコウノトリ見て声あげる  玲
山法師昔を今に武将墓  照子 夏の海今も昔もかわらずに  照子
コウノトリ一羽植田の昼下がり  恭子 卯の花の白さあふれるバスの道  幹男
「栴檀の花よ」教えてくれし旅の友  幹男 早苗田に点となりたるコウノト  萬地郎

この日の夕食は舞鶴市役所近くの割烹「まこと」で楽しみ、その最寄り東舞鶴駅から西舞鶴駅まで舞鶴線の一駅だけ乗車した。
宿泊はビジネスホテル風ではあるが、温泉大浴場も備えているので、寛ぐ事も出来た。

語り合い肩寄せ合って夏の月  恭子 ビール置き一同カメラヘ向く笑顔  萬地郎
三日目:

この日も朝から快晴。最終日なので、チェックアウトし、バスに乗り込む。三日間とも同じバス会社で、運転手は変わっても、気持ちが良い人ばかりで、愉快な旅だ。宮津市の道中での俳句も出来ました。

鴎外忌山椒太夫の里過ぎぬ  恭子 安寿姫せめて見給え夏の空  恭子

一時間程のバス乗車で天橋立は籠 (この) 神社に立寄る。伊勢神宮に祀られる天照大神と豊受大神がこの地から伊勢に移られたとの故事から元伊勢と呼ばれる古社。

ここから笠松公園へのケーブルカーが停止中なので、人の少ない社殿などを訪ねる事が出来た。

少し離れた桟橋から観光船で海路、天橋立を眺めながら対岸の知恩寺へ向かう。かっぱえびせんを投げればカモメや鳶たちが争うように飛びついてくる愉快なひと時でもあった。

知恩寺の先の乗り場からリフトで6分乗れば、天橋立ビューランドに到着し眼下に天橋立が一望できた。ここには多くのインバウンド観光客も見られ、龍の姿の天橋立をバックに写真を撮っていた。遊園地も併設されていて家族連れも多い。

天橋立の眺望を満喫しながらリフトで下り、知恩寺を拝観して、バスに戻った。

宮津天橋立ICを経由して、途中の丹波PAにて昼食を摂り、15時に京都駅に到着し旅は終了した。

 

籠神社イモリをつかんで逃がす友  恭子 みぎひだり茅の輪くぐりてガザ思う  展子
舟影に子鰯群れる宮津湾      展子 カモメらの餌を奪い合う夏の海    恭子
橋立や卯波寄せ来る金の砂     道雄 万緑やリフトの先の橋立龍      牧子
薫風や天橋立股のぞき      萬地郎 松龍を目がけて夏の空に舞う     恭子
万緑や順番待ちの股のぞき     尚子 リフトから天橋立夏の風       尚子
また会おう次もう決めた夏の夜   恭子