湘南高校 36回35組 第 10回 関西修学旅行

昨年に引き続き、愉快な仲間たちが 11 名集まりました。元気に取り仕切り、昨年までの幹事・片岡弘道君の逝去は大変残念でしたが、高橋敬君の初参加がありました。今年も大下恭子さんの綿密な企画と、幹事役の田中幹男君のお蔭でトラブルも無く楽しい旅が出来ました。以下、皆さんから俳句と写真を載せて、旅の写真と俳句を紹介いたします。

(2024年1月10日)
・旅の総括句 八十路越え古刹めぐりや寒日和  尚子

・新幹線にて 富士山の車窓に映る冬日かな   展子

新幹線の車窓より

・慈眼院  氷雨中無言詣での多宝塔     道雄
      朝時雨苔の中建つ多宝塔     尚子
      注連飾小さき塔を苔囲む     恭子
      苔踏まぬよう並んで写真春の雨  幹男
      冬蜂へそっと阿弥陀の手が伸びる 萬地郎
      お飾りも少し小ぶりや多宝塔   萬地郎

(左) 慈眼院にて:重要文化財の金堂  (右) 国宝の多宝塔

・日根神社 お祓いの巫女もはじける初戎   克介
      正月の茅輪疫病下さんと     恭子
      火を焚いて十日戎の市たてり   萬地郎

(左) 日根神社の社殿  (右) 神社前の十日戎

・金剛寺  冬ざれや鄙におわせし五佛像   克介
      寒き日や女人高野の大伽藍    道雄
      初東風や五色幕なす女人堂    萬地郎

(左) 金剛寺:重要文化財の金堂  (右) 重要文化財の楼門

・観心寺  楠公の無念伝えて冬深し     克介
      春時雨建てかけの塔に首塚に   恭子
      賓頭盧の頭と顎を撫でて冬    萬地郎
      御陵へと石段長し息白し     萬地郎

(左) 観心寺:山門にて  (右) 国宝 金堂

(左) 観心寺:建掛塔  (右) 観心寺の奥の後村上天皇陵に登った

・カンティーナアルコ 献杯やあの友おらぬ京の冬 牧子

(2024年1月11日)
・當麻寺  葛城の眠れる山に塔ふたつ    克介
      古寺巡礼蝋梅越しに塔二つ    道雄
      冬なれど古刹の庭の柿たわわ   麿
      見せばやな當麻の春を亡き友に  恭子
      冬ざれや絵に成りそうな塔二つ  幹男
      蝋梅やその色香は我好み     展子
      白鳳の塔を逆さに冬の池     萬地郎

(左) 當麻持 金堂(国宝)  (右) 東塔と手前の西塔(いずれも国宝)

(左) 當麻寺・西南院庭園  (右) 當麻寺にて

・新薬師寺 十二神午は波夷羅か年明くる   克介
      高畑の傾く築地八一の冬     展子
      薬師守る怒髪の像の眼冴え    萬地郎

新薬師寺 本堂(国宝)

・円成寺  春近し若き仏師の如来像     克介
      運慶初作と語る住職息白し    道雄
      腰伸ばし拝す如来や堂寒し    麿
      うららかに運慶仏の初名乗り   恭子
      寒林に見えて隠れて多宝塔    萬地郎

(左) 円成寺の楼門(重文)  (右) 春日堂(左)と白山堂(いずれも国宝)

・浄瑠璃寺 日脚伸ぶ宝池に映える彼岸の塔  克介
      寒梅や紅一点の天女像      克介
      此岸より彼岸を望む冬日和    道雄
      冬晴れの浄土を想う九体佛    道雄
      憧れの九体仏は春の中      恭子
      戦乱に極楽うつす寺の春     恭子
      キブシ蝋梅黄の花の時期と友の言う 幹男
      冬日差す此岸彼岸を猫走る    展子
      寒鯉のゆるり池面の塔揺らす   萬地郎
      ねんねこの婆守る堂の九品仏   萬地郎

(左) 浄瑠璃寺:宝池に写る三重塔(国宝)

(左) 浄瑠璃寺:阿弥陀堂(国宝)  (右) 三重塔(国宝)階段下にて

(2024年1月12日)
・智積院  凍てる星凍てる足元勤行へ    牧子
      着ぶくれも朝の勤行皆神妙    幹男
      勤行に平和を祈る白い息     展子
      百人の読経のうねる寒九かな   萬地郎
      寒暁の護摩焚く僧の背の丸さ   萬地郎

・智積院会館 寒行を済ませ温か和定食    幹男

(左) 智積院の朝の勤行へ参加  (右) その後に大書院へ(長谷川等伯父子の襖絵:複製画)

・醍醐寺/三宝院 台風の狼藉残して寒に入る  克介
      鳥の声一瞬止まって冬木立    展子
      醍醐寺や冬まだ硬きさくらの芽  萬地郎
      襖絵や一段ひくき勅使の間    萬地郎

(左) 醍醐寺の五重塔(国宝)  (右) 弁天堂

・法界寺  寒き堂迦陵頻迦の笑まふ闇    幹男
      堂冷えや天女図剥げし太柱    萬地郎
      枯蓮や堂は極楽池は修羅     萬地郎

(左) 親鸞誕生の地と云われる法界寺の金堂(国宝)  (右) 法界寺の庭池

・旧奈良街道 追い追わる源平の道春訪ぬ   恭子
      もののふの戦い尽きて春の夢   恭子

・バスの中から 木守柿多くを残す奈良の里  展子
      枯草の若草山やあおによし    萬地郎
      冬の川歌舞練場の灯を写し    萬地郎

・平家の人々へのオマージュ
      春浪漫公達の声さざめきて    恭子
      散りゆきぬ平家の武者の花のごと 恭子
      鵼を読む平家は今も友にあり   展子
      着膨れの歴女の惚れる武人墓   萬地郎

本三位の中将:平重衡の墓
関西には幾度も来ても今回の旅行先はこれまで訪ねた事がない寺が殆どでした。インバウンドの多い観光日本でもこれらの古寺は人も少ない穴場的な名刹でゆっくりと旅する事が出来ました。旅を作った、大下恭子さんと田中幹男さんへ心から感謝いたします。

(左) 撮影禁止の仏(写真より):観心寺の秘仏如意輪観音(国宝)  (右) 金剛寺の如来と明王(重文)