歴史館ギャラリー4月以降の予定

歴史館ギャラリー4月以降の予定

行事名: 松田博史「水彩紀行展」
会期: 4月15日(月)〜7月19日(金)
   ※日曜祝日 休館
場所: 湘南高校歴史館ギャラリー

今回は41回卒業の松田博史氏の水彩紀行展を開催します。
松田氏は毎日新聞社で長年政治部のジャーナリストとして活躍し、昭和から平成にかけての日本の政局の様々な局面に立ち合い、また報道してきた人物です。
退職後ふとしたきっかけで絵を描くことに親しみ、長年ジャーナリストとして培った眼と心で、独自の技法を使い水彩画を製作しています。
今回は水彩画と内容豊富な文章のパネルを並列して展示しております。

湘美会 廣田 雷風 (らいふ)

★以下松田博史氏の投稿です。

「水彩紀行展」

67歳で絵筆を持って今年で10年。「絵心」とは全く無縁だった私が、10年前、ひょんなことから「描いてみたい」と創作意欲がわいてきた。ある友人から突然勧められ、また別な友からはおだてられ、「ならば、やってみるか」とその気になった。

今思えば、自分でしか作り出せない「創作」への強い憧れ、その「創作」をいつまでも残したいという老人特有の喜びを感じたのかも知れない。

師匠のいない無手勝流で自由奔放に描くと決め、「いったい自分はどんな絵を描くのだろうか」と自分に問いかけてきた。坂道を前にして、頭の中のスケッチブックに上り坂を描き、「下り坂なら?」なんてイメージトレーニングをしながら歩くことも。魚売り場へ行くと、買う気もないのにイワシやアジの青みの色合いをのぞき、藍色、茶、赤、黄、黒など「十匹十色」の輝きを観察している。

「絵の具の白は使わずに紙の地色を白に見立てる」という考え方があるようだ。決まりではないだろうが、確かに最初に買った絵の具セットには白が入っていなかった。白壁や波、雲、氷河などを白色絵の具なしで塗るのには当惑した。でも、そこは無手勝流、何の気兼ねもない。ついに5年目から「禁」を破って白を思いのたけ使うことにした。おかげで雪渓や朝霧、白壁、白煙・・・の色塗りが思うようにできてきた。

また極細の線を引くのに、超極細の絵筆が見つからないので代用できるものを探した。習字の筆、歯ブラシ、鳥の羽根とか考えてはみた。カラスの羽根に目をつけたが鳥インフルエンザを警戒してあきらめ、取り入れたのが爪楊枝(つまようじ)だった。今では壁の汚れ、桟橋のひび割れなどの極細描写に絶好の小道具として駆使している。歌舞伎役者がメイクをするときに使う極細の面相筆より意外と役立っている。

今回、素人の水彩画だけを並べたのではおこがましく、なにか一味違った絵画展にできないものかと考え、書き溜めたエッセイ風の拙い文章を絵の下に添付してみた。仲間からは「絵を見に来られるので、文章なんか読まないよ」とけんもほろろな反応だったが、ここも無手勝流で意地を通した。全作品の原稿を横書きに変え、文字も大きくしてA4サイズに収めた。3度、4度と原稿を削り落とし、13行以内に収めた。拙い原稿だが、絵を見た人がこの短い文章を読んで「えー、なるほどね」と、もう一度絵に目を戻してくれないだろうか。私は、そんな反応を心ひそかに期待している。

今回、初めて自分の絵を外部に披露することになったが、まだ道半ばの作品ばかり。
いつの日か自分が納得できる「一枚の絵」にたどり着きたいと願っている。いったいどんな絵なのだろうか。「一枚の絵」を追い求める私の水彩紀行の旅はまだまだ続く。

松田 博史 (41回生)