第64回 湘友会セミナー報告

  • 日時:2018年 4月21日(土) 14:00 ~ 16:00
  • 場所:湘南高校歴史館スタジオ
  • 演題:グローバルな視点とソーシャルビジネス
    (副題: アフリカにおける乳幼児栄養改善プロジェクトに参加して)
  • 講師:取出 恭彦氏 (50回生)

今回の講師である50回生 取出恭彦さんは、この報告書を作成している私 (坂井) の同級生です。取出さんに対するセミナー講師の依頼は、私がおこないましたが、依頼のきっかけは、3年程前のクラス会で本人より、ガーナでの栄養支援の話を聞いた事がその発端です。

味の素で研究開発の仕事をしていた取出さんが、なぜ 海外青年協力隊が出かける様な地域にわざわざ出かけて仕事をしたのだろう? その動機は? という私の疑問が、今回のセミナーの出発点でした。

取出さんは、東京大学の農学部の大学院を経て味の素の研究所でアミノ酸に関する研究を始めますが、その仕事を通してアメリカの研究者が開発途上国の乳幼児の栄養支援に取り組んでいる事を知ります。その後、研究開発の分野から自ら希望して海外の営業の仕事に転じ、そこでフランス ダノン社が取り組むバングラデシュでの栄養支援に関するソーシャルビジネスについて興味を持ちます。

ソーシャル・ビジネスとは、「社会的な問題をビジネスの手法を応用し解決する。」というものですが、取出さんは、2009年にソーシャルビジネスの手法を用いてアフリカのガーナで実践する。というプロジェクトを会社に提案し、自らがリーダーとなりガーナでの栄養支援プロジェクトが開始されます。

開発途上国に対する支援と聞くと、インフラ整備をするためにお金と人を投資することを思い浮かべますが、取出さんのプロジェクトでは、乳幼児向けの補助栄養食を作る工場を作るだけではなく、母親がその補助栄養食を買うために現金収入を得る仕組みを作ったり、乳児期のバランスの取れた栄養がいかに重要か という教育まで現地でおこなう事になります。

セミナーで紹介されたプロジェクトの内容で、私が面白いと思った事柄は、母親が現金収入を得られるようになると、そのお金は、子供に投資する という話です。父親が収入を得た場合、それは必ずしも子供にまわってくるわけではありませんが、母親が現金を得ると、例外なく子供にお金をかけるようになるとの事でした。いつの時代であっても、また洋の東西を問わず、それは有益な投資であり、アフリカのお母さんも自然にそれを実践しているという話が印象に残りました。

ガーナの農村に赴き現地の母親に乳幼児の栄養摂取の大切さを説明する取出さんの姿を想像すると、そのフットワークの良さに驚かされます。またその姿は、私に、「松明は自分の手で」という本田技研の藤沢武夫氏のことばを思い出させてくれました。

坂井一敏 (50回生)