第84回湘友会セミナーのご案内「成人期の発達障害」

  • 日時: 2019年12月14日(土) 13時30分~15時30分
  • 場所: 湘南高校 歴史館 スタジオ
  • テーマ: 成人期の発達障害
  • 講師: 岩波 明 氏 (52回生)
  • 対象: 湘南高校 卒業生、在校生、教職員
  • 参加費: 無料
  • 事前申込: 不要

【セミナー概要】
近年、成人期における発達障害は、精神医学の分野においても、社会的にも大きな注目を集めている。精神科の実地臨床においては、児童・思春期を中心として扱われていた発達障害が、成人期においても症状の持続がみられること、さまざまな併存疾患を伴うケースが高い頻度で認められることが広く知られるようになり、成人期における発達障害に対する治療に加えて、行政、福祉における対応・援助の重要性が認識されつつある。

成人期の発達障害における主要な疾患は、ASD (自閉症スペクトラム障害) とADHD (注意欠如多動性障害) であるが、今回の報告においては、成人期における発達障害の診断と治療の現状と今後の課題について、昭和大学における臨床経験を基にして検討したい。成人における発達障害は、これまで見逃されていた疾患であるため、正しく扱われていないケースは少なくない。長年にわたり診断がつけられず、症状が慢性化し適切な対応を受けてこなかった例もみられている。社会的には、1990年代の後半から企業経営の厳しさが増し、従業員に対する要求が過大になってきたこともあり、職場において、発達障害など発達障害を持つ従業員の多少の「ずれ」も重大な瑕疵として認識されるようになっている。

一方、成人における発達障害の治療において重要であるのは、当事者本人が自らの症状や問題点を自覚することであり、そのような認識に基づいて、現実の生活における対応策、解決策を見出していくプロセスである。

発達障害は医学の側面からみれば、「障害」「疾患」であるが、別の側面からみれば、「特性」であり「個性」でもある。実際、自らの特性をうまく利用して、社会で活躍している人は少なくない。例えばADHDは「計画をたてるのが苦手で行動が衝動的」という特徴を持っているが、別の面からみると、「思考や行動が柔軟で創造性が高い」ことも多い。

このような観点から、発達障害と才能、文化といった問題についても検討したい。

【講師プロフィール】
昭和大学医学部精神医学講座教授。東京大学医学部をへて、東大病院精神科、東京都立松沢病院、埼玉医大精神科などに勤務。
2008年、昭和大学医学部精神医学講座准教授
2012年より現職
2015年より、昭和大学附属烏山病院長を併任

著書に、『発達障害』(文春新書)、『発達障害と天才』(文春新書)、『名作の中の病』(新潮社)、『狂気という隣人』(新潮文庫)など、訳書に『内因性精神病の分類』(監訳 医学書院)などがある。