第97回湘友会セミナー報告「海洋プラスチックごみの現状 ~わたしたちにできること~」


■第97回湘友会セミナーが開催されました。
日時: 2023年7月29日(土)14時00分~16時00分
場所: 湘南高校歴史館スタジオ
テーマ:「海洋プラスチックごみの現状 ~わたしたちにできること~」
講師: 松浦(渡辺)治美氏(51回生) (公財)かながわ海岸美化財団代表理事

■セミナーの講演概要

1. 海岸のごみは誰が捨てたごみ?

・海水浴や花火大会などのイベントに多くの人が遊びに来る神奈川県の海岸のごみは、来遊客が捨てたごみと考えている人が多いのですが、実は、来遊客が捨てたごみは全体の3割で、7割は山や街のごみが川を通して海に流れ出てから海岸に漂着したものです。
・街中の道路脇の排水溝にタバコの吸い殻がポイ捨てされているのを見かけることがありますが、こうしたタバコの吸い殻は下水管を通って、そのまま川に流れ、やがては海岸に流れ着きます。街や山で捨てられたごみは、川に運ばれて海に出て、海岸にたどり着くのです。
・だから、海岸ごみの問題は、海岸を清掃するだけでは解決しない、川が流れている陸域全体の問題なのです。

2. 海洋生物への影響

・2018年8月に、鎌倉市由比ガ浜にシロナガスクジラの赤ちゃんが漂着し、まだ母乳しか飲んでいない赤ちゃんクジラにもかかわらず、その胃の中からビニール片が発見されたことから、大きな話題になりました。
・プラスチックの輪が口にはまったまま死んだアザラシ、漁網にからまって死んだウミガメ、釣り針が足に刺さったままのウミネコ等、海洋ごみ、特にプラスチックごみは、海洋生物にも大きな影響を与えています。
・ウミガメが産卵するのは南の島だけだと思われがちですが、実は、神奈川の海岸にも年に数件、ウミガメの産卵があります。しかし、産卵場所の海岸がごみで汚れていると、卵から孵った子ガメがごみに阻まれて海までたどり着けないということもあります。ウミガメは生まれた場所に帰って産卵する習性があるそうです。神奈川の海岸で生まれた子ガメが無事に海に出て、また帰ってくるようなきれいな海岸にしたいものです。

3. 海岸ごみとプラスチックごみの問題

・かながわ海岸美化財団が回収している海岸ごみは、毎年、年間2000トン前後です。このうち流木や木の枝などの自然系のごみを除いた人工ごみは、海岸ごみ全体の約1/3で、人工ごみの約6割はプラスチックごみです。
・人工ごみの組成を30年前と比較すると、平成4~6年度には人工ごみの約4割だったプラスチックごみは、平成28~30年度では約6割に増えており、コロナ禍で不織布マスクやテイクアウトのプラスチック食器などのごみも増えているので、最近ではプラスチックごみは7~8割になっているかもしれません。
・そして、プラスチックごみの中でもペットボトルが特に多く、30年前の海岸ごみの主役はスチール缶でしたが、最近ではそれがペットボトルに代わってきています。
・海岸に流れ着いたプラスチックごみは紫外線や波の影響で小さく砕け、マイクロプラスチックとなって海に広がっていき、そうなるともう回収ができません。だから、海岸は、ごみを海に出さないための「最後の砦」です。
・海に出たマイクロプラスチックを小さな魚が食べ、その魚を大きな魚が食べ、そして、その大きな魚を人間が食べ……最近の研究結果によると、人は平均的に1週間でクレジットカード1枚分に相当するプラスチックを摂取しているそうです。
・海に出たプラスチックごみは分解されず、毎年、新たなプラスチックごみが流出するので、2050年までに、海中のプラスチックの重量は魚の重量を超えると言われています。

4. かながわ海岸美化財団とは

・かながわ海岸美化財団は、1991年4月に、神奈川県と相模湾沿岸の13市町によって設立され、横須賀市走水海岸から湯河原町湯河原海岸までの150kmの自然海岸を、年間を通して効率的・効果的に清掃しているほか、海岸美化啓発、ビーチクリーンボランティアへの支援を行っています。
・「かながわの海岸はごみが少なく、きれいだ」という声をよく聞きますが、これは、ごみがとても多い時があっても、美化財団の清掃により、すぐに海岸をきれいな状態に戻しているからなのです。

5. 海岸ごみのあれこれ

・海岸ごみに関するトピックをいくつか紹介します。
・ごみはどこにでも漂着します。江ノ島の西浦という海岸のように、舟でしか運び出せないような海岸にも漂着します。
・海岸の砂の上で磁石を滑らせると、釘がたくさんくっついてきます。これは、海の家を解体したときに落としたまま拾われなかった釘。海岸は裸足であることも多いので、とても危険です。
・BBQの燃え残りの炭を海岸の砂に埋めて行く人がいます。炭は木から作られたので、土に埋めれば自然に還ると考えたのでしょうが、炭は炭素の塊でこれ以上分解しません。炭もごみとして持ち帰る必要があります。等々

6. わたしたちにできることは?

・ごみは、ポイ捨てだけでなく、街中のごみ箱からあふれ出したり、川のそばのごみ集積場所から漏れ出したり、いろいろな形で川に落ちて、海へ流れていきます。海岸ごみの7割は川から来ること、海岸ごみのうち人工ごみの6割がプラスチックごみでありことから、海岸のごみを減らすには、陸域のプラスチックごみを減らすことが重要だと言えます。
・増え続ける海岸ごみの入口対策は、私たちのくらしの中でこれからのごみを出さないこと、出口対策は、今ある海岸ごみを回収することです。これからのごみを出さないためには、生活の中で、使い捨てプラの使用を減らす、マイボトルを持つなど、自分のできることを選んで実行することが大切です。出口対策のビーチクリーンをしたいと思ったら、美化財団に連絡していただければ、サポートします。一人ひとりができることから始めましょう!
のごみはどこから? それは、から。
のごみはどこから? それは、から。
のごみはどこから? それは、人の心から。
松浦 治美 (51回生)