第44回湘友会セミナー報告

○日時: 平成28年8月13日(土)
○場所: 湘南高校 多目的ホール
○テーマ: 『スペイン遠征でのサッカー体験と、怪我の処置』
○講師: 加納正道氏 (43回生・サッカー部OB、外科医、神奈川県サッカー協会理事)


サッカー部夏のOB会の日に開催するセミナーは、恒例の行事となっている。OB会員に加えて、現役サッカー部員、父母を加えて160名が参加し、多目的ホールで実施した。講師の加納氏は外科医で、春に行われたサッカー部のスペイン遠征に同行した。

この遠征はISのテロの影響があり、スペインとロンドンでの当初の計画を、スペイン国内のみという内容に変更した。湘南高校サッカー部がスペイン遠征を行うのは7回目で、 北部のバスク地方の都市ビルバオにあるプロのサッカーチーム「アスレチック・ビルバオ」との交流を続けている。

バスク地方はスペインでは独自の文化・言語を持つ特殊な地域で、独立志向が強い。アスレチック・ビルバオは、リーガ・エスパニョーラで2部に落ちたことがない強豪チームであり、ユーロ2016にも代表選手を出している。同チームは、バスク出身者しか入団させないという極めて稀な方針のチームである。ヨーロッパの大半のチームは、南米などから選手補強を行っている。外部から選手をとらないため育成に注力し、選手育成には定評がある。湘南高校サッカー部は、ここをポイントに提携先を選択した。

育成世代の試合では、副審をつけずにオフサイドを厳しくとらない事もある。これは、FWとBKの個の戦いをさせ、個を強くすることを意図している。このほか、試合形式の練習では、いい縦パスが入ったときにはコーチが手を叩いて「ナイスパス」と称賛し、相手にボールを取られたときは「プレス、プレス」とコートに飛び出して大きな声で叫んだリ、またコーチがゲームをとめてポジションを修正するなど10代の選手育成の練習について、動画を交えての説明を行った。


加納氏が昭和40年代に湘南で教わったサッカーと、現在のスペインで教えているサッカーは、本質的には変わらない。「基本が大切」ということであった。

遠征の試合で、現役選手の1名が手首の骨折をした。救急車で病院に運び、加納氏も同行した。スペインの病院は、非常に友好的で治療も適切であった。病院スタッフはアスレチック・ビルバオのサポーターであり、湘南がサッカーで来ていることを知り、この診察は無料にしてくれた。サッカー文化の広がりと深さを感じる一幕であった。

後半では、サッカーでの怪我などの実例を説明する。試合中、グランドで心臓停止し、AEDで、心臓を再度動かした事例。高校生の試合で、ヘディングで競って、頭と頭がぶつかって、救急車 2台を呼んで入院した事例などを紹介。OBや現役の試合の身近に起こったことで、いつ類似のことが起こっても不思議ではなく、日頃の準備が重要である。試合会場に入ったらAEDの場所を確認する、何かあってもAEDの音声指示にしたがって、落ち着いて対応するなどを強調した。

このあと、現役生徒の代表 2名が登壇し、スペイン遠征の総括と反省を述べた。OB会のサポートで充実した遠征が実施されたことに謝辞があった。反省点では、忘れ物、パスポートの紛失から日本とは異なる治安の状況等に言及した。高校生の時代に、これだけの海外経験ができたことは大きな収穫であった。

セミナーの概要は以上であるが、この日は、OBがおよそ100名集まり、若手は午前中に試合、40才以上はセミナー終了後の夕方に試合を行った。15才から69才までが、サッカーを楽しんだ1日であった。 (48回生、関佳史)