第54回湘友会セミナー報告

テーマ: 「宇宙人ジョーンズはなぜ生まれたか?」
講師: 福里 真一 (全62回生)

開催日:  2017年6月24日(土)

(第54回湘友会セミナーのご案内)

■はじめに
2017年6月24日、CMプランナーとして活躍中の福里真一さんを講師にお迎えして湘友会セミナーが開催されました。ご本人は何人の来場があるか心配されていましたが、ふたを開けてみれば椅子が足りなくなるほどの盛況となりました。

講師紹介を務めてくださったのは、福里さんの高校時代のクラス担任だった全46回生の増尾茂男さんです。

福里さんは62回生で、高校時代はバレーボール部。3年次の体育祭では総務パートで赤色の仮装の台本作成のメンバーでした。その仮装はストーリー・演技が素晴らしく、12色の中で優勝。赤色の総合優勝に貢献しました。当時から現在の活躍の芽があったのかもしれません。

湘南高校卒業後は一橋大学に進学され、大学卒業後は電通に入社。2001年に独立し、現在はワンスカイ所属。

吉本総出演で話題となったジョージア缶コーヒーの『明日があるさ』シリーズ、樹木希林らによる富士フイルム『フジカラーのお店』シリーズ、サントリーBOSS『宇宙人ジョーンズ』シリーズ、トヨタ自動車『こども店長』『ReBORN』『TOYOTOWN』各シリーズなど、ヒットCMを多数、企画・制作されました。

2001年「明日があるさ」、2009年「こども店長」で新語・流行語大賞トップ10に入賞。TCCグランプリ、ACCグランプリなど数々の賞も受賞。作詞を手がけたウルフルズのCMソング「明日があるさ」が2001年大晦日のNHK紅白歌合戦で歌われ、歌の紹介で福里真一さんの名前が画面に出たとき、ご両親はとても喜ばれたそうです。

■CMプランナーの仕事『明日があるさ』
セミナーは、CMの脚本家である“CMプランナー”という仕事についてのお話から始まりました。「すべてのCMには理由がある」。CMが成り立つ背景には必ず目的があり、プランナーはその目的を達成すべくCMを作成するのです。持参されたパソコンから会場のスクリーンに映し出された画面には、福里さんの優しさが感じられる手書きの文字やイラストが表示されました。

始めは、2000年に発表され、3年間続いたジョージア缶コーヒーのCM『明日があるさ』シリーズ誕生の経緯。バブルが崩壊し、日本人が元気をなくしていた1990年代は“癒しの時代”。ジョージアは“やすらぎキャンペーン”と題し、飯島直子さんらを起用したCMをつくっていました。

しかし21世紀に突入し、日本人が少しずつ自信を取り戻し始めていた当時。福里さんが広告主から依頼されたのは「前向きになりつつある時代に、ジョージアが新たに提示するものは何かを考えてください」というものでした。

CMの目的は「前向きの時代、働く人々の共感を得るCMをオンエアすることでジョージアのブランドイメージを上げる」ということになります。

そこで、まず福里さんは考えました。「本当に今、前向きな時代なのだろうか?」と。福里さんの性格は、ご自身いわく「まったく前向きではない」とのこと。「まず“前向き”という言葉に拒否感がある」と、会場の笑いを誘いつつ、ご自身の性格を分析。

そして、NHKのドキュメンタリー『プロジェクトX』やモーニング娘。の「ラブマシーン」の大ヒットにヒントを得て、「“前向き”を信じてみよう」、「前向きなストーリーは好きではないが、前向きな歌はきらいではないかもしれない」と思ったこと、それが『明日があるさ』シリーズとCMソング誕生につながっていったことなどを語られました。

美人受付嬢役に起用された仲間由紀恵さんが、当時そのせいで吉本タレントと間違えられたという話や、日産のカルロス・ゴーン社長が、歌詞にある「新しい上司はフランス人」は自分のことだとCMに言及されたといったエピソードも聞くことができたうえ、懐かしいジョージアのCM映像を多数拝見できました。

■ヒットCM続々『こども店長』『マルちゃん正麺』『宇宙人ジョーンズ』
続いて、数々のヒットCMについてのお話。子役だった加藤清史郎くんが出演したトヨタ自動車「こども店長」、役所広司さん主演の東洋水産「マルちゃん正麺」、日本郵便「ゆうパック」の松本人志さん“バカまじめな男”といったシリーズも、ここでは細かく書けませんが、貴重な裏話をたくさん聞かせていただきました。

12年以上も続いているトミー・リー・ジョーンズ主演サントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」シリーズは、始めアメリカで撮影されていたそうですが、2年ほどしてからは年2回、日本で撮影。親日家のジョーンズさんは、北海道から沖縄まで、来日するたびに日本旅行を楽しんでいるのだとか。

■CMプランナーに必要な資質とは?
最後に、CMプランナーに必要な資質について。特に決まったものはなく、コツコツ企画を考えられる、人間力や人脈がある、プレゼンがうまいなど、人によってさまざまだが、福里さんの場合は“集団になじめない性格”が意外と生かされている、CMプランナーに適していたとのこと。なじめないゆえに、人を観察する力が養われたと、幼少時や高校時代のエピソードも交えてお話されました。

バレー部の仲間、62回生の仲間、お子さんが湘南高校に在籍している卒業生など、たくさんの聴衆で満席となった歴史館。Q&Aタイムでは、82回生、83回生、現役の94回生など若い世代からも活発に質問が寄せられました。福里さんの「これをきっかけに、CMプランナーを目指す人が出てくれれば」という言葉が現実となるかもしれません。興味深いお話と映像、楽しい時間をありがとうございました。

※その後、福里さんには湘南高校100年ロゴマーク・スローガン審査委員会メンバーになっていただいております。